東北大学工学研究科・工学部
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PRESS RELEASE

2005/03/11

貝沼助教授らの研究グループは、振動や音を吸収する制振合金の開発に成功しました。

東北大学大学院工学研究科の貝沼亮介助教授、大森俊洋博士、同先進医工学研究機構の須藤祐司助手らの研究グループは、振動や音を吸収する制振合金の開発に成功した。



制振材料とは、振動・騒音の発生や伝播を抑制する材料であり、黒鉛鋳鉄、マグネシウム合金や形状記憶合金が知られている。また2枚の鋼板の間に樹脂を挟んだ「制振鋼板」は極めて優れた制振特性を有するが、金属と樹脂の複合材であるため、機械的強度が低く、曲げ加工や溶接の制約、また廃棄物のリサイクル等の問題を有している。「制振合金」は金属単体でありリサイクル性にも優れているため、近年研究が盛んに行われており、その発生機構として、複合型、転位型、強磁性型および双晶型に分類されるが、その中でも双晶型に分類されるNi-Ti(ニチノール)やCu-Zn-Al合金などの形状記憶合金、さらにはMn-Cu合金等は、高い制振性能と高い強度を兼ね備えた制振合金として注目されている。しかしながら、これらの合金は、それぞれコストの面、室温での加工性や熱処理の制約などの問題があるので、汎用性の制振部材の開発が望まれていた。



今回開発された高性能双晶型制振合金は、東北大グループが約10年前から研究して世界に先駆けて開発した高加工性Cu-Al-Mn系形状記憶合金を採用して可能となった。ニチノールや従来のCu系形状記憶合金では約20〜30%の圧延加工で破壊が生じるのに対しCu-Al-Mn合金では80%以上の冷間加工が可能である。また、それと同時に材料組織の制御を利用することにより、高い引張強度(約800MPa)を保持しつつ、制振性能を表す尺度である対数減衰率δが、従来の形状記憶合金やMn-Cu基合金(δ=約0.18)の1.5倍以上(δ=約0.3)向上する(図参照)。本Cu-Al-Mn系制振合金は、板、線、パイプ等への成形が非常に容易であり、振動・騒音を抑制するための自動車部品、音響部品、また生活騒音対策としてアパートやマンション等の配水管への適用が考えられ、今後さまざまな産業分野での応用が期待される。



尚、本成果は、今年の6月14日〜17日に中国、上海にて開催される国際会議ICOMAT′05(The 11th International Conferenceon Martensitic Transformations)にて報告される。

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上記板状試料に金属球を落下させた時に生じる音の波形の減衰曲線
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