東北大学工学研究科・工学部
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PRESS RELEASE

2005/05/12

バイオロボティクス専攻西澤教授等の研究グループは血液で発電間近のバイオ燃料電池開発に成功しました。

東北大学大学院工学研究科の西澤松彦教授の研究グループは新たな電子メディエーター化合物を合成し、グルコース(血液中の糖成分)から発電する人体に安全なバイオ燃料電池を開発、血液を模擬した血清入り培養液(中性、37度)を用いた実験で実用化に繋がる発電量を立証した。



新たな電子メディエーター化合物を酵素と混合,塗布した電極(負極)でグルコースから電子を取り込み,これと,酸素を還元する電極(正極)を組み合わせて発電させるバイオ燃料電池を構成した。
一円玉サイズで0.2mW(ミリワット)程度の電力を生み出すことができ,これは例えば血糖値を計測してデータを発信する装置を作動させるのに十分な出力レベルである。
酵素を用いたバイオ燃料電池は各所で検討されているが、電子メディエーター化合物に金属錯体を用いるケースがほとんどで、生体毒性が無視出来ない問題があった。
今回用いた電子メディエーター化合物はビタミンK3を修飾、高分子化したポリマーで、共同開発を進める第一製薬グループの第一化学薬品(東京 蘆田伸一郎 社長)が合成したもの。生体物質に近いビタミンK3を基にしていることから、安全性に優れ、将来は体内埋め込み型の燃料電池として血液からの発電も期待できる。「安全性は出力と同等に重要なバイオ燃料電池の性能」(西澤教授)という。
血液中には、ビタミンCなど正極の性能を低下させる妨害成分が含まれるが、生体適合性に優れたシリコン薄膜で電極を覆って酸素だけが反応するように工夫するなど、血液を用いることによる性能低下対策も進めている。現在、実際の血液からの発電や実験動物への埋め込みも計画中である。



発電量が血糖値に比例することから、バイオ燃料電池としての機能のみならず、電池機能を有した自立型の血糖値センサーとしての実用化の可能性もあり、第一化学薬品、機器メーカーなどと開発を進める。
この研究は、厚生労働省「ナノテクノロジによる機能的・構造的生体代替デバイスの開発」の一環であり、5月19日の第4回国際バイオEXPOで成果発表する予定である。

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東北大学工学研究科・工学部情報広報室
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