東北大学工学研究科・工学部
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PRESS RELEASE

2005/07/05

都市・建築学専攻の持田助教授等の研究グループは仙台市中心市街地の街路樹の効果について発表しました。

東北大学大学院 工学研究科 都市・建築学専攻 持田 灯 助教授の研究グループは、同大 工学研究科 吉野 博 教授、東北工業大学 建築学科渡辺 浩文 助教授、同大 環境科学研究科 境田 清隆教授らのグループと共同で、仙台市の中心市街地を対象とする大規模な実測を行い、街路樹が温熱環境や空気汚染に及ぼす影響を測定した。この結果、街路樹の繁茂する定禅寺通では、日射遮蔽効果により日中の体感温度が最大で約9℃低下し、けやき並木が温熱環境の向上に大きく寄与しているが、その風速低減効果により自動車からの排気ガスが滞留しやすくなっていることが確認された。そこで、最新の流体数値解析技術を用いて、日射遮蔽による温熱環境の改善と風通しの確保を両立するための最適な街路樹の形態、配置計画の検討を行った。



本研究は、本学工学研究科先端学術融合工学研究機構の都市再生・環境工学研究ユニットの研究プロジェクト「地域の環境ポテンシャル評価とこれに基づく高環境効率型環境デザイン(プロジェクトリーダー:吉野博教授)」の活動の一環として行ったものである。



【背景】
近年、ヒートアイランド対策の一環として都市緑化が推進されている。中でも、緑陰や蒸散による熱的効果だけでなく景観の改善等も期待される街路樹の効果が注目され、種々の研究がなされているが、熱的効果の検討が中心であり、自動車等からの排気ガスの拡散に対する影響も含めて総合的に検討した例は少ない。このため、日射遮蔽や気温低下等のプラスの効果のみに目を奪われ、樹木による風速低減や汚染ガス拡散への影響等を考慮することなく、闇雲に緑を増やしさえすればよいとする風潮が見受けられる。本研究では街路樹のある市街地だけでなく様々な状況の領域(大通り、細街路、公園)を対象とした測定を行い、歩道や公園等のような屋外生活空間を中心に、温熱環境、気流分布、NOX濃度分布等の性状を詳しく計測した。



【実測結果】
図1は、夏の典型的な晴天日の日中に撮影された定禅寺通の街路空間の熱画像である。欅並木の日射遮蔽効果により、定禅寺通の歩行者空間の温熱環境は大幅に改善されており、都市内の緑の大きな環境改善ポテンシャルが確認された。しかし、街路樹の影響により、自動車の排気ガスが滞留し、NOX濃度は周辺街区よりも高くなるという結果も得られており、現在、数値シミュレーションにより、樹木の日射遮蔽効果と風通しの確保を両立させるための街区計画の検討を進めている。



【数値解析結果】
図2は、東二番丁通、青葉通、広瀬通周辺の市街地の歩行者レベル(地上1.5m)の風環境を、数値流体力学的手法を用いたシミュレーションにより予測した例である。建物の形状、配置の影響により、地表付近の風環境は大きく変化している。



この東二番丁通を対象に、街路樹の植栽形態を変化させた解析を行った。樹木が植えられていない場合は、街路空間内の風速は大きいが、日射が遮蔽されずに路面や建物壁面に直接照射するため表面温度が高くなってしまう。一方、街路樹を植樹した場合は日射が遮蔽され、植樹の密度を増やせばより遮蔽能力が大きくなるが、過剰な街路樹の配置は風速を低下させ、自動車の排気ガス濃度の上昇につながる。しかし、この問題は樹冠の高さや形状を変化させることによって制御可能であることが明らかとなった。



今後は、このような屋外の微細な気候分布を考慮した最適な室内居住環境デザインの方法論の構築へと研究を進めて行く予定である。



【成果発表】
これらの成果を、2005年7月にプラハで行われるThe Fourth European & African Conference on Wind Engineeringで発表する。

図1 定禅寺通りの街路樹の熱的効果の測定 (2004年夏季晴天日に撮影された熱画像)
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図2 仙台中心市街地の風環境に関する数値シミュレーション
※画像クリックで拡大表示
【お問合せ】

東北大学工学研究科・工学部情報広報室
TEL/ FAX:022-795-5898
E-mail:情報広報室メールアドレス

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