東北大学工学研究科・工学部
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PRESS RELEASE

2005/10/21

知能デバイス材料学専攻の高村助教授等の研究グループは酸素透過膜を利用したコンパクトな水素製造装置の開発に成功しました。

工学研究科知能デバイス材料学専攻の高村仁助教授等の研究グループは日本板硝子、仙台市ガス局などと共同でコンパクトな水素製造システムの開発に成功しました。



【背景・従来技術】
家庭用燃料電池や燃料電池自動車が必要とする水素を、メタンやそれを主成分とする天然ガスから製造する技術としては水蒸気改質法が広く利用されている。これは、メタンに水蒸気を摂氏700度程度の高温で反応させることにより行われる。これに対して、最近、酸素を用いる部分酸化改質法が注目されている。この方法は約1時間の起動時間を要する従来の水蒸気改質に比べて起動性に優れ、さらに、純酸素の利用により全く同等の改質効率も得られる。このシステムを実現するために必要な機能性材料として空気中の酸素を分離する酸素透過膜がある。酸素透過膜は酸素のみをイオンとして透過させる機能を有し、膜の片側に空気、反対側にメタン等の原料ガスを供給すると部分酸化改質に必要な酸素を自動的に供給できる。これまでの研究で、本研究グループは、1分間に1平方センチメートル当り14立方センチメートルの酸素を分離できるセリウム酸化物を主原料とした酸素透過膜を開発しているが*、セパレータやガス流通機構と一体化した改質モジュールの試作が課題であった。



【研究成果】
今回の研究では、本グループが開発した上記の酸素透過膜をガスの流路制御を可能とする耐熱ステンレス製セパレータと一体化することに成功し、実際に改質モジュールを試作した。その結果、この新型改質器では1キロワットの燃料電池が必要とする毎分10リットルの水素を6cm角(容積220立方センチメートル)で製造できることが明らかとなった。現在の1キロワット級家庭用燃料電池には容積約20リットル(20,000立方センチメートル)の改質器が搭載されている。新型改質器は、一酸化炭素を水素に転換するシステム等を付加する必要があるが、既存のシステムに比べてサイズが1/10以下のコンパクトな改質器となることが期待される。
図1には、今回試作された耐熱ステンレス製セパレータと一体化された酸素透過膜(膜厚135マイクロメートル)を示す。今回採用した酸素透過膜は熱膨張係数が11×16-6/℃ であり、耐熱ステンレス製セパレータとほぼ一致するため、昇温過程や作動中に酸素透過膜が割れることはなかった。シール材の開発は日本板硝子(株)が行った。この膜1枚当り150立方センチメートルのメタンを改質する能力があり、実際に筐体温度が摂氏780度のとき転換率96%で水素が製造された。これより、この膜20枚で毎分10リットルの水素が製造できると計算され、図2には実際に20枚積層した改質器を示す。このサイズは6cm角(容積220立方センチメートル)であり、極めて小型の水素製造装置となることが分かる。現在、連携できるセットメーカーを模索中。

図1: 開発された膜モジュール(6cm角)
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図2: 20枚スタックされた改質器
※画像クリックで拡大表示
【お問合せ】

東北大学工学研究科・工学部情報広報室
TEL/ FAX:022-795-5898
E-mail:情報広報室メールアドレス

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