東北大学工学研究科・工学部
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PRESS RELEASE

2005/11/02

バイオロボティクス専攻の小菅教授等の研究グループは歩行補助の新型装置を開発しました。

東北大学工学研究科バイオロボティクス専攻の小菅一弘教授等の研究グループは歩行補助の新型装置を開発しました。

【背景】
人間はある年齢を過ぎると、加齢につれ肉体的機能が衰えていく。そこで高齢者のための肉体機能補助システムの開発が求められている。本研究では装着型のロボットシステムにより衰えた脚筋力を補助することで、人間の基本的な移動手段である歩行をはじめとする下肢の運動の支援を行う装着型歩行支援システムを開発する。



【従来研究】
従来の装着型支援システムでは主に装着者の生体信号を計測し、計測された生体信号の組み合わせからデータベースに従い現在行われている運動を推定し、その推定された運動に基づいて支援を行うタイプが主流となっている。そしてこの生体信号には主に人間が筋力を生成する際に発生する活動筋電位が用いられており、筋肉の表面に貼り付けた電極により計測されている。しかし、活動筋電位はノイズが入りやすく信号処理が非常に困難である。さらに、人によって変化するだけでなく、同一人物においても体調や電極を貼り付ける位置によって変化する。その上、計測用の電極は肌に直接貼り付けるが、汗により精度が落ちるため皮膚表面に汗をかくほどの長時間の使用には不向きであった。



【本研究の目的】
本研究では生体信号に基づいて支援の大きさを決定するのではなく、人間の動的モデルに基づき、力学的な筋肉の負担に基づいた支援を行う装着型歩行支援システムを開発する。これにより、生体信号と運動を関連付けるデータベースが必要なくなるので汎用性が高く、かつ床反力や関節角度といった皮膚との接触を必要としない情報を用いているので長時間の使用に関しても信頼性が高く、安全で実用的な装着型支援システムの開発が可能になると考えられる。



【開発したシステム】
本研究では、人間の体を単純なリンクモデルに近似することで関節周りの筋肉の負担を算出し、それに基づいて筋肉の支援量を決定する。そして、人間の脚部に装着した支援機により支援力を生成することで脚部の筋肉の負担を軽減し歩行支援を行うシステムを実現する。開発した装着型歩行支援機試作機は人間の膝関節の構造を模擬したデュアルヒンジジョイントの付いた下肢装具、DCモータとボールねじで構成することによりバックドライバビリティを持たせた直動アクチュエータ、床反力の測定が可能な圧力センサ内蔵靴、関節角度測定用ポテンショメータで構成されている。バッテリー、制御装置を含めた総重量は約10kgである。床反力に基づいて関節周りの負担を算出することで、歩行のように立脚や遊脚といった脚の状態が遷移する状況においても連続的な支援が可能となった。 本システムを用いて筋力の負担を軽減させることで、普段より少ない力で椅子からの立ち座りが可能となるだけでなく、筋持久力が増大し運動の強度を軽減させることが実験により確認された。



【応用展開】
本研究は現在、高齢者のような筋力の不足している人でも、筋力を補助することで健常者と同様の運動を可能にさせる支援システムの実現を目的として進められている。しかし、このようなシステムは身体機能の衰えた人だけでなく、建設現場や災害現場のようなより大きな力を必要とする場面での活用も期待できる。



【研究室ホームページ】

http://www.irs.mech.tohoku.ac.jp/

今回開発した装置
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【お問合せ】

東北大学工学研究科・工学部情報広報室
TEL/ FAX:022-795-5898
E-mail:情報広報室メールアドレス

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