東北大学工学研究科・工学部
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PRESS RELEASE

2007/01/15

電気・通信工学専攻の松浦助教授の研究グループは小型・低価格化が可能な泌尿器科用内視鏡レーザー治療装置の開発に成功しました。


【新規発表事項】
 東北大学大学院工学研究科電気・通信工学専攻の松浦祐司助教授の研究グループは,泌尿器科および一般外科における内視鏡手術に有効な中空光ファイバーを用いたレーザー治療装置の開発に成功しました.このレーザー装置は,泌尿器科における結石破砕術,前立腺肥大治療をはじめ,一般外科での組織切開などにも有効であり,小型・低価格な低襲侵医療機器としての実用化を目指しています.

【背景】
 本格的な高齢化社会をむかえた近年,さまざまな医療分野において人体への影響が小さい低襲侵治療技術の開発が求められています.おもに泌尿器科において用いられているホルミウムヤグレーザー装置もそのひとつですが,効果的な結石破砕をおこなうには大きなレーザーパワーが必要とされるため,大型・高価な装置となり比較的大規模の病院のみに普及してきました.また,ホルミウムヤグレーザーを生体組織の切開に使用する場合,光が組織中に深く浸透するために凝固層が形成され,切れ味が鈍いという欠点がありました.これはレーザーを伝送するのに使用されている光ファイバーが,通信用として広く普及しているファイバーと同じで石英ガラスを主成分としているため,その材料吸収が原因で,生体組織の切開能力が高い長波長のレーザーを伝送することができなかったためです.

【訴求点】
 長波長のレーザー光を効率よく伝送することができる中空光ファイバーと,結石や生体組織に強く吸収されるエルビウムヤグレーザー(波長3ミクロン)とを組み合わせることにより,従来のホルミウムヤグレーザー(波長2ミクロン)が必要としていた10〜20Wというパワーの約1/5のレーザーパワーで同程度の効果が得られる内視鏡レーザー治療装置を開発しました.必要なパワーが大きく低減されるために装置の小型・低価格化が可能となるうえに,不要なレーザー光の照射が抑えられ健常組織への影響も低減されます.直径0.5ミリ程度の細径中空光ファイバーを使用することにより,直径2ミリ程度の細径内視鏡を用いた治療装置が実現され,尿管等の細部への挿入が可能です.また,止血効果の高いホルミウムヤグレーザーやネオジウムヤグレーザー(波長1ミクロン)なども同時に伝送することが可能で,止血をしながら患部の切除などを行うことも可能となります.

【今後】
 当研究グループでは,今後,小型,高性能な内視鏡レーザー装置の実用化に向けて,医師および医療機器メーカーとの連携を進めてまいります.
当研究グループは,赤外レーザー光伝送のための中空光ファイバー研究のパイオニア的存在であり,世界的に見ても主導的な立場で開発を進めています.これまでに開発したファイバーの一部にはすでに医療機器として実用化,市販されているものもあり,現在も中空光ファイバーをはじめ,さまざまな伝送路と細径内視鏡を組み合わせた治療機器や光診断装置の開発を積極的に進めています.

【備考】
 本成果は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)産業技術研究助成事業による研究成果です。


【お問い合わせ先】
東北大学工学研究科 情報広報室
TEL/FAX:022-795-5898

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E-mail:情報広報室メールアドレス

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