東北大学工学研究科・工学部
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PRESS RELEASE

2008/09/11

技術社会システム専攻の須川成利教授の研究グループが監視カメラ向けワイドダイナミックレンジCMOSセンサの実用化に成功 〜感度とダイナミックレンジでCCDを超える高画質を実現〜

(説明)
 東北大学大学院工学研究科技術社会システム専攻 須川成利教授の研究グループは,日本テキサス・インスツルメンツ株式会社(本社:東京都新宿区,社長:山崎俊行,略称:日本TI)と共同で開発を行っていた,高感度ワイドダイナミックレンジCMOSイメージセンサの製品実用化に成功いたしました.実用化した量産製品『TC922』は,各画素内に横型オーバーフロー蓄積容量(LOFIC)構造(*1)を設けることで,今までのCCDやCMOSイメージセンサでは実現できなかった,単一露光での高感度とワイドダイナミックレンジ(*2)の性能を両立しており,屋内から屋外まで高品質な同時撮像を行うことができます.『TC922』は日本TIより供給されます.

(概要説明)
 監視カメラや車載カメラにおいては,デジタルカメラなどに要求される高感度,低ノイズ,高解像度などの基本性能に加え,暗い屋内やトンネル内と日差しの強い屋外のシーンの両方を確実に撮像するためのワイドダイナミックレンジ性能の実現が求められています.こうした要求に応えるために,東北大学では,日本TIと共同で,2003年から,画素内に受光画素であるフォトダイオードと,非常に明るい光入力に対して発生した電子を蓄えるための横型オーバーフロー蓄積容量 (LOFIC) 構造を持つ,新規な高感度ワイドダイナミックレンジCMOSイメージセンサ(略称 LOFIC CMOSセンサ)の開発に取り組んでまいりました.LOFIC構造を導入することにより,現状のCCDやCMOSイメージセンサで課題となっていた,感度を上げると早く飽和してしまうという感度とダイナミックレンジのトレードオフを単一露光動作において解消しました.画素内感度と飽和信号量の積でみますと,1桁以上の性能向上を達成しています.現状のCCDやCMOSイメージセンサにおいても,複数回の蓄積時間の異なるシャッター動作の後で映像を合成することで広いダイナミックレンジを得る方法がとられていますが,露光タイミングの異なる複数の映像を合わせたときの合成ズレが生じ,画質劣化の原因となっていました.LOFIC CMOSイメージセンサでは,単一時間露光のため同時性が保たれており,合成ズレのような問題が生じません.また,光の強さに比例した線形の映像信号を得ることができるので,カラー画像処理を高精度かつ容易に行うことができます.
 LOFIC CMOSイメージセンサの研究成果の発表はISSCC(2005年,2006年,2008年Forum),VLSI Circuits(2005年,2007年),ESSCIRC(2007年),A-SSCC(2007年)などで行っております.
 今回製品化された『TC922』は800×600のSVGAの解像度を持ち,水平・垂直ともに従来CCTVカメラを上回る高解像度(原理的には水平解像度560本)と,高いレスポンスを持つ画素内アンプおよびリセット雑音低減回路を内蔵し,高感度・低ノイズを実現することで高画質CCDに匹敵する性能を実現しています.さらに,画素内にはLOFIC構造を設けることで,単一露光で数個から約20万個までの光電子を信号として取り扱えますので,現状のCCDやCMOSイメージセンサを圧倒する広いダイナミックレンジ(94デシベル)を確保することができます.

(図1)『TC922』のチップ写真(日本TI提供画像)
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(図2)『TC922』(上)と従来のCCD(下)との撮像画像比較
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(図3)画素感度と飽和信号量の関係図
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(用語解説)
(*1)横型オーバーフロー蓄積容量(LOFIC)構造:
 画素内のフォトダイオードの飽和容量を超えるほど強い光があたった場合に,フォトダイオードからあふれる光信号電子を横方向に導き蓄積する容量構造.
 LOFICはLateral Over Flow Integration Capacitorの略.現状のCCDやCMOSイメージセンサではフォトダイオードからあふれた光信号電子は利用せずに捨てている.

(*2)ダイナミックレンジ:
飽和信号とノイズ信号の比.デシベル単位で表すことが多い.


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Phone: 022-795-4833
Fax: 022-795-4835
E-mail: sugawa@most.tohoku.ac.jp

東北大学大学院工学研究科 情報広報室
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