東北大学工学研究科・工学部
過去のプレスリリース一覧

PRESS RELEASE

2009/10/05

ナノメカニクス専攻の燈明 泰成 准教授の研究グループは金属極細線の自己完了的ジュール熱溶接手法の開発に成功しました。


【概要】

東北大学大学院工学研究科の燈明 泰成 准教授の研究グループは、直径1ミクロン以下の金属極細線同士の接触部に電流を付与して発生するジュール熱により、接触部を溶融、凝固し、細線同士を自己完了的に溶接する新しい手法の開発に成功しました。また、一定電流の付与下で自発的に溶接過程が進行する溶接条件を規定するパラメータを提案、実証することで、当該溶接手法の適用範囲を大幅に拡張することに成功しました。
 本研究成果は、米国物理学会Physical Review B誌の2009年10月2日オンライン版で公開されました。
なお本成果は、科学研究費補助金 若手研究(A)21686012(研究代表者:燈明泰成)、および基盤研究(S)18106003(代表研究者:坂真澄)によって得られました。


【背景】

金属、半導体ナノ/マイクロ材料が持つ優れた特性を十分に活用するためには、製造したナノ/マイクロ材料を自在に接合、切断する手法の開拓が不可欠です。そこで、ヒータ加熱、電流や高密度電子ビームを用いた微細材料の溶接手法について世界中で活発な研究が進められていますが、現状においては溶接過程を制御することが難しい等、難点があり、経験的に試行されている段階です。


【研究の内容】

私達は電流により発生するジュール熱を利用した微細材料の溶接手法について研究してきました。これまでに、大気環境下での微細材料の溶接に成功しておりましたが、今回、走査型電子顕微鏡内での溶接実験にはじめて成功し、その溶接過程を詳細に観察することができました。細線同士の接触部はナノレベルの微小な突起の集合体であることから、電流付与時にはここでの温度が高くなり、局所的に高い温度場が形成されます。接触部の温度が融点を上回ると接触部は溶融しますが、これにより微小な突起が消失し、高い温度場が解消されることで、電流の付与下においても自発的に接触部が凝固します。この自己完了的溶接機構は、溶接過程のその場観察と、細線接触部を含む回路電圧の変化から特定することができました。
 また、これまでにナノコンタクト部の溶融現象を支配するパラメータを提案[H. Tohmyoh, J. Appl. Phys. 105, 014907 (2009)]しており、大気中での検証を行っておりましたが、高真空下にある走査型電子顕微鏡内でもこのパラメータが有効であり、環境によらず、細線を高確度に溶接できる電流範囲が存在することを実証しました。


【今後の展望】

自己完了型の本ナノ溶接技術は、次世代電子回路の作製に役立ちます。また、極微小熱電変換素子や電磁気素子等、様々な機能を有する極微小デバイスの創製に利用できます。さらに、近年世界中で活発な研究がなされているナノスケール対象物のマニピュレーション技術の高度化にも役立つことが期待されます。

図1 一定直流電流(2.2mA)の付与直後、わずか6秒程度の間に細線接触部の溶融・凝固が生じ、電流を遮断せずとも、自己完了的に溶接が完了します。
※画像クリックで拡大表示


【今回発表した論文】

Self-completed Joule heat welding of ultrathin Pt wires
(白金極細線の自己完了的ジュール熱溶接)
Hironori Tohmyoh(燈明 泰成), Satoru Fukui(福井 里留、博士前期課程1年)


【お問い合わせ先】
東北大学大学院工学研究科 准教授 燈明 泰成
Tel: 022-795-4026
E-mail: tohmyoh◎ism.mech.tohoku.ac.jp(◎は半角の@に置き換えてください)

【お問合せ】

東北大学工学研究科・工学部情報広報室
TEL/ FAX:022-795-5898
E-mail:情報広報室メールアドレス

このページの先頭へ