大学生活の中で直面する勉強や研究、進路の悩み、コロナ禍における修学環境への戸惑い、日常生活の心配や困り事などを、たった一人で抱え込んでいませんか。工学部・工学研究科では、学生さんのさまざまな課題や困難に向き合い、解決に近づくための方法を一緒に考える「学生支援室」「カウンセリングルーム」を設けています。長年、大学教育に携わってきた相談員(教職経験者)と専門的な訓練を積んだカウンセラー(臨床心理士・公認心理師)が、どんなお話にも真摯に耳を傾け、人生における得がたい学びの季節を、豊かで実り多きものとなるよう力強くサポートいたします。
「些細なことなんだけど相談してもいいのかな」「カウンセリングは少し抵抗がある」と利用をためらわれている方もいらっしゃるかと思います。そんな方々に向け、山村力先生と及川真奈先生からのメッセージをお届けします。現時点では特に必要がないと思われている方も、助けや支援が欲しい時に駆け込める場所として、頭の片隅に置いていただければありがたいです。
「学生支援室」は、工学部・工学研究科のすべての学生さんに開かれた場所です。日々の生活やキャンパスの中で出合う困り事から一人では手に負えない難しい問題まで、「一緒に解決の糸口を探し、よりよい方向に近づいていこう」というのが、学生支援室の趣旨です。気兼ねなく気軽に立ち寄れる“よろず相談所”と考えていただいたほうがいいかもしれません。
身近な人には言えないことでも、第三者になら話せるという方もいらっしゃることでしょう。心の内を打ち明けることで気持ちが晴れたり楽になったりすることもあります。また、相談員との会話を通じて、何か新しい気づきやヒントが得られ、課題との向き合い方を見直すことができるかもしれません。まずは、勇気を出して一歩を踏み出し、少しずつでもよいので不安や心配事を話してほしいと思っています。とはいえ、「こんなことで相談していいのかな…」と二の足を踏む学生さんもいらっしゃるかと思います。ほんの一例ですが、これまでどんな相談が寄せられてきたのかご紹介しましょう。
学業や研究に関する相談には、教職を経験した相談員が親身になって応じます。また、上級生が支援を行うケースもあります(「学生支援室チューター」制度)。年齢も近く、身近な存在からアドバイスを受けられると好評です。
さらに、工学部では、「アドバイザー教員」という制度を導入しています。これは研究室に所属するまでの間、学部生一人に一人の教員を配置し、マンツーマンで修学指導や個々の目標達成のサポートなどを行う仕組みです。そこでさらに何らかのサポートが必要と判断された場合、学生支援室が引き継ぐなど、工学部内での協力体制が構築されています。
「学生支援室」では、学生さんからじっくりとお話を聞いた上で、相談内容に応じては担当教員や保護者と連携を図ったり、学内の他の相談窓口や外部の専門機関を紹介したりすることもあります。心の不調に関しては、工学部・工学研究科のカウンセリングルームをお勧めしています。さらに体調面の不安は「東北大学保健管理センター」、ハラスメントは「ハラスメント全学学生相談窓口」など、それぞれの悩みや問題に特化した相談機関が整備されています。もちろん相談上の秘密は守られ、氏名・所属や来談内容が外部に漏れることはありません。保護者や教職員にコンタクトを取る場合には、必ず相談者の承諾を得てから行っています(ただし緊急を要する場合はこの限りではありません)。
「カウンセリング」というと非常に深刻な問題が対象で、利用することに対して気恥ずかしく思ったり、「わたしはまだ受けるまでではない、必要でない」と抵抗を感じたりすることもあるでしょう。一方で、国や文化によっては、日常生活の中で感じた違和感や悩みの芽を摘むために「心の専門家」の支援を受けることが一般的というところもあり、身近なサポート資源となっています。
苦しい思いが渦を巻いていたり、後悔や絶望感に苛まれていたりする時は、自分の考えがうまくまとまらないものです。カウンセラーとの対話を通じて、モヤモヤ・不安・心配事を整理するプロセスを丁寧に重ねていくのがカウンセリングです。カウンセリングではカウンセラーが事細かな指導をしたり答えを出したりすることはありません。あくまでも相談者と一緒に、気持ちを軽くする考え方、他者との向き合い方、自分の力で立ち直っていく方法を探していきます。話し合いを通じて、自分の思考の癖に気付くというのは大事なことで、現在の状況に適した考え方に切り換えることができます。これによって解決への新しい視点が得られることもあります。
カウンセリングは、1回あたり40~50分、相談者のペースでお話をしてもらいます。お話をうかがいながら、どんなことがあったのか、誰とどんな言葉を交わしたのか、その時どのような気持ちになったのか、などといった事実を整理していきます。1度お話するだけでも気持ちが落ち着いていく学生さんもいれば、1週間に1回、あるいは2週間に1回と継続して取り組む場合もあります。また、気になることが出てきたり、落ち込みそうだなと感じたときには、その都度、カウンセリングを受けるという方もいます。まさに百人百様です。ぜひご自分のリズムとペースで利用してほしいと思います。
本学部・研究科の学生さんは、これまで自分を律し、目標に向かい勉学に励み、努力を実らせてきた方が多いと思います。困難や障壁が現れたら、なんとか自分一人の力で解決・改善したいと思われるかもしれませんが、多様な人がさまざまな関係を形成する環境では、思うに任せないことも多くなります。「人(専門家)に話を聞いてもらうカウンセリング」という選択肢をぜひ加えてほしいと願っています。
2020年来、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴って、人との接触が大きく制限されました。本学においても、対面授業からオンライン授業への移行が進み、研究ならびに課外活動も制約を受けました。そもそもキャンパスは多様な人(個性)と出会い、心の動きの機微に触れ、理解・共感する力を育む場でもあります。学生のみなさんにとっては友達づくりが難しい状況になったのは残念なことでした。課題や研究を進める際のクラスメート・友人の存在というのは非常に大きいものがあります。わからないことには知恵を出し合い、知識を交換し、時に良きライバルとして刺激し合いながら成長していきます。孤独を癒してくれる存在でもありますね。ですからコロナ禍における学生相談は、勉強をどう進めてよいのかわからない、友達もできず寂しい等の訴えが多く占めました。
コロナ禍は未だ先行き不透明ですが、東北大学では感染状況に応じた行動指針(BCP)を提示し、感染対策と研究・教育活動を可能な限り両立していこうとしています。ですから行動制限が緩和されている期間は、キャンパスでの時間を大いに楽しんでほしいと心から願っています。“新しい日常”の中で、一人ひとりが学生生活を充実・発展させ、社会へ飛び立っていけるよう、学生支援室としても最大限のバックアップをしていきます。あらかじめ電話かメールによる予約をお願いしていますが、大きな悩み・相談事がなくても、授業の合間や心が疲れた時に利用してください。いつでもウェルカムです。
キャンパスライフが閉ざされたコロナ禍の中では、心も閉じこもりがちになり、カウンセリングでは現状に対する失望や不満が語られることも多くありました。特に保護者のもとを離れたばかりの一年生の不安や心配はいかばかりであったかと思います。カウンセリングの中で、私が勧めていたのは近所の散歩やウォーキング。体を動かすことは、気分転換にもなりますし、メンタルにも良い働きかけがあります。こうしたさまざまな“閉ざされ”の中で、少なくともカウンセラーと話ができたことは良かったという感想もありました。また、カウンセリングの最後に「話を聞いてもらえて良かった。社会に出てからも、カウンセリングを受けてみようと思う」と言っていただくこともあり、カウンセラーとしての役割が果たせたのかなとうれしく思いました。
青葉山キャンパスの工学部管理棟には、学生支援室やカウンセリングルームを利用したことのある学生さんに向けて利用していただける部屋やスペースがあります。教室でも研究室でもない、キャンパスのなかのもうひとつの居場所として気軽に利用してほしいですね。(感染症対策として利用する際は事前の連絡があると助かります)
「各系学生支援室」「カウンセリングルーム」の
利用方法は、下記ページをご覧ください。